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talk 対談 庵里直見 フォーナイン 99.99tt

Guest

 鈴木香子さん

 斉藤幸子さん

 井上貴文さん

 井野久明さん

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井上貴文 私は「適当・ていたらく」がテーマのような男です。

鈴木信市 そうなんですか。(笑)

井上 普段考えて生活してるほうではありません。多分まわりにいる人も十中八九適当な人だなと感じてると思うんです。実際、自分について省みることなんてほとんどないのですが、その割には負けず嫌いで、何かやろうとすると絶対負けたくないし、できるようになりたいという気持ちは強くあります。私の場合、この本を読んで、自分を省みる、よいきっかけになったかなと感じました。普段考えることがすごく面倒くさいという感じで、自分の行動や言動を省みたり考えたり全然しないんですけど、「ああ、こういうふうに読んでこういうふうに考えると全然難しくないし全部そのとおりだな」というのがいっぱいありました。

 例えば、最近この年齢になってきて後輩に教えることが多くなってくるんですけど、自分ではうまくできたことも、分かりやすく説明するということが難しくて、感覚的になってしまうんです。自分も感覚的に生きてきたので。つまり、この本にあったように、無意識の有能力という状態にあるという場合が一番多いかなと気がつきました。まあ、うまくできるだけで満足してそこで終わってしまうという行動パターンは、ああ、確かに自分には多いなと。

 そこから一歩、何でそういうふうにしてるのかとか、なぜこうなるのかというのを説明できるぐらいまで突き詰めたことはないなというのに気づいたのです。そういう点でイチローという、ああいう人たちはすごいなということに気づいて、それが一番印象的でした。

 何とかなる、死ぬわけじゃねえというのが自分にはあるんです。「脳のクセ」と表現してありましたよね。そうはいっても、やはりきちんと考えてやっていかないと、結局はある程度のところまでしか自分の行動を持っていけないし上達もないんだなと、そこで自分を省みられたということがすごくよかったなと思う。

鈴木信市 質問させていただいていいですか?

 自分自身がパフォーマーとして、自分の成果を上げるときには何の問題もなかったと。自分はちゃんとできるんだから。

井上 まあ、ごまかしごまかしですけど、まあ、形というか、できないことはすごくくやしいので、こと自分に関してだったら突き詰めるんですけど。

鈴木信市 それじゃ、そこを教えてくださいと言われると。

井上 バーンとやって、ガーンといって、みたいな効果音になってるんです。

鈴木信市 おもしろいですね。

井上 確かにこれを読んだときに、こういうところまで行かないと、これから年を重ねていく上でだめなんだなというのがわかりました。

鈴木信市 多分それってね、井上さんが能力的に高いとか低いという問題ではなくて、この本の中にも出てきますけど、人それぞれ情報をどうやってつかまえてるかという「脳のクセ」があるんです。その「脳のクセ」が違うんですよね。

 以前、これのもとになってるある講座をやってるときに俳優さんが来られたんです。その俳優さん、今でも映画にたくさん出ていますし、見れば誰でもあの人ってわかる人なんですね。例えばロバート・デ・ニーロさんみたいな人なのが「ロバート・デ・ローロ」と名札がついているわけですよ。詳しいことは言えませんが、来られた理由はそれなんですよ。

 その俳優さんというのは、自分のことをしっかりやってたと。それなりに負けん気も強くてプライドもあるんだけど、かといって根つめて一生懸命演技の勉強ということは全然やらなかった。

 ところが、自分は運がよかったのでいろんな人に声かけてもらって映画を中心にどんどんいろんなものに出てる。すると、「○○さんみたいな演技がしたい」という人が来るらしいんですね。若い人たちはほんとに真剣だし、自分も教えたいんだけど、どう教えればいいかがわからないと言うんですね。自分は自然にやってるから。

 例えば「好きです」と言うのを、「おお、今!」というタイミングがあるにもかかわらず、若い人たちたちが、ワンテンポ遅れて「好きです」と言うと、「違う、違う、違う」という、そのときの説明がやっぱり、「さっと」だとか、「ばばっと」という効果音になってしまう。本人はわかってるんだけど、言われてるほうはそれがわからないから一生懸命苦労してるのに、ということなんです。だから本人のパフォーマンスはあるんですよ。

 で、何が違うかというと、人それぞれが「現実」という情報を頭の中で処理するときに、感覚を通したものを細かく精緻な言葉としてまとめる側にいる人と、その細かく分けずに全部塊として「今、こんな感じになっている」という、大きな雰囲気の中で暮らしてる人がいるんですね。

 長嶋茂雄は、マスコミから流れてくる情報を分析すると、自分がどう打ってるかを細かく分かっていない。「こうきたやつを、ほら、バットをこう動かしてビシッと叩くとボールがバシュッと飛んでいく」みたいな感じだから、教わってるほうは全然わからない。もちろん長嶋茂雄の考え方はちゃんとあるわけです。毎回適当にやっているのではなくて自分の中では何かこれだというものがある。でも、それを伝えることが難しい。そういう状態ではプレーヤーとしては大変な能力あるんだけども、コーチにはあまり向いていない。

 多分、井上さんが感じられたのも、自分自身がパフォーマンスして社会の中で生きていかれる上では問題ないんでしょうけれども、これから組織をつくられるのか、あるいはもっと大きな活動するために部下を育てるという流れの中では、細かい部分を表現しなければならないことが増えてくるから、その辺りのことも重なっているんじゃないかなという気がしたんですけどね。今、時期的なものとして。

 だから、これ、ほんとに「脳のクセ」みたいなものですよ。そういう細かな感覚をもとにした人と、全体の気持ちとかおおまかな感じの人に分ければ、間違いなく後者でしょうね、お話を聞いてると。

井上 この本に書いてあったような思考をやっていくことで克服できるというか・・・。

鈴木信市 そうです。克服というよりもつけ足していく感じですよ。ご自分のやり方は悪くないので。

 イチローさんは逆のタイプなんですよ。あの人は自分が今何をやって何があったとか、わかるタイプなんです。だから、自分の頭の中でボールをとらえてこう打ったら必ず一塁線を抜けてったはずなのに、なぜか一塁線を抜けずに二塁の方へ行っちゃったと。自分の体の何が、どの動かし方が間違ったのかという身体感覚のズレがどうだったかということを自覚できる。だから修正ができるんですけど、そうじゃないタイプの「今、気分よくビシッと決まった」みたいな感じの人というのは後でビデオよく見ないとわからないんです。あっ、ステップインが大きかったなとかね。それはもうほんとに「脳のクセ」だから。でも、それは悪いことではないですよね。

 さっきの俳優さんは、最近立て続けに出てますよ。でも、自分の演技力の秘訣がわからないと言ってた。でも、それにこういうことをつけ加えれば広がるんですよ。自分でわかる範囲の世界に、人がわかる範囲の伝えてあげられる世界がつけ加わるわけだから、うん、倍になるという感じですね。

 本を読んだことは、いい経験になりそうでした?

井上 そうですね。これを読んだら、今まで何も考えないで行動してましたけど、一連の行動パターンみたいなのをやってみようかなって思っています。まず自分を知って、状況を知って、目標を立てて実行してみるということですかね。技術レベルで「無意識の有能力に意識的である」というのがありましたよね。あれです。今自分はどこにあって、その状況を知ると。それからリフレーミングでしたっけ、物事の視点を変えていくということと合わせて目標を立てていく。

 確かに具体的な目標を立てたことがなかったので、さっきも話がありましたけど、そこに向かって行ってみようという目標を立てて、あとは実行する。確かに妥協じゃないですけど妥当なラインばかりやってきたので、失敗を失敗と思わないで、「パズルのピース」という表現もありましたね。そう思えれば確かに一定の行動パターンで、自分の行動を試してみられるかなと今、思っています。

鈴木信市 それ、いいですね。

井上 そういうのを試してみようというきっかけにはなりました。

鈴木信市 今どんな方向性とか、どんなことをしようかなというのは、もうあるんですか?

井上 いや、これからです。

鈴木信市 これからですか?お仕事の関係で何か新しいことをしていこうかなという感じですか?

井上 仕事もそうですし、対人関係もそうですね。やはり相手のことも理解してあげればもう少しうまくできると思うし、自分の固定概念とかだけでつき合いをしていくよりは変わってくるかなというのはありますね。

鈴木信市 この本の中でお伝えしたかったことの一つに、人とのかかわりがあります。自分は自分の世界の中に住んでるわけですよ。ある種の考え方を通して作った世界に住んでいる。でも、人は自分とは違う世界に住んでいるというのがある。例えばピッチャーの決め球を打ち砕くという文章がありますが、それぞれ自分の世界に生きてるわけです。コミュニケーションをするというのは実は相手の世界というものをどれぐらいこちらが理解して、その世界に近づいていくかということ。難しく言うとそうなんですね。

 だからよくあるのは、じゃ、僕がプレゼントを鈴木さんに贈りましょうと。鈴木さんは赤が絶対に似合うから赤いマフラーを買いました。ぜひしてくださいと贈ったとしますよね。しかし、鈴木さんは実は赤が嫌い。昔、大嫌いなやつが赤ばかり着てて赤は絶対着ないぞと思うような地図をつくってたとしますよね。僕は、「鈴木さんは赤が絶対に似合うから赤を着てください」と言うと、一応「ありがとう」とは言ってくれるけど、つけてこないわけですよ。「つけてよ、つけてよ」と言ってもつけてこないと。

 何をやってるかというと、僕の地図の中で、すごくすてきな鈴木さんというのがあって、その鈴木さんは赤をつけてるから、それを押し付けてるだけなんですよね。こちらの世界のほうから見てる。

 鈴木さんの世界をよく見てみると、何か赤はあまりいいものではなくて、赤いものは避けたいなと思ってて、どうせつけるなら緑がいいわと思ってる。その鈴木さんを本当に喜ばせようと思ったらプレゼントは緑でないといけないですよね。「これで喜んでもらおうと思ってさ、絶対に赤が似合うよ」というのは、こちらの地図を相手にかぶせてるだけ。でもほんとに相手に喜んでもらうプレゼントを買おうと思ったら、相手に地図の中で相手が何を望んでるのかなというのを探さなければいけないんですよ。

 いい人間関係というのはそういうことで、コミュニケーションのうまい人というのは、自分の中で起きてることと同時に、相手がどういう世界の中で生きてる人なのか、何を大事にしてるかとか、どういうことにウエートがあるのかとか、この人にとって普通って何だろうかということをすごくよくわかる人なんですよね。井上さんにとって、いいスタートになりますよね。

井上 あと一つ言いたいことがあります。「救われたな」というところがあるんです。以前、人間の行動なんて結局条件づけだとかということを聞いたことがあるんです。条件付けとかってありますよね。心理学の、何かあると何ができるみたいな。

井上 その言葉が残ってたんですけれども、この本の中で「事実は選択できる」という言葉がありましたよね。それを読んだときに、結局意味を与えるのはこちら側なので、条件付けですべて説明できるというのからは解放されたなという思いがあって。

鈴木信市 そうですね。条件付けられたものが一遍に変わるか、順番に変わるかは別ですけど、変えていくことはできますからね。

井上 これ本当にいい発見でした。

鈴木信市 条件付けだと結構苦しくありませんか? もう一生これか、みたいな感じがして。

井上 そう。結局こうなっちゃうんだ、みたいな感じがあるので。

鈴木信市 限界というか、自分の未来が見えちゃったみたいな感じがしますよね。あの親から生まれたから、おれの一生これに違いないみたいなのが見えてしまうと寂しいですよね。でも、今のお話はすごくおもしろいですね。

 その条件付けという話、どこかの本で読んだりされたんですか?

井上 大学で心理学をやったんです。わけが分からなくって、データ処理で終わっちゃいましたけど。

鈴木信市 この本に書かれているものは社会的にいうと、学問の世界からもう少し実学の世界に振られてるものですけれども、学問として勉強した人の目から見ても意味があるなあという部分が感じられました?

井上 全然こちらのほうがいいと思います。

鈴木信市 そうですか。うれしい話ですねえ。

鈴木信市 じゃ、今回来ていただいてる男性の方たちはお二人とも、心理学の専門的な分野の経験がある方なんですね。

井上 経験というほどのものじゃないですけど。

鈴木信市 いや、この本で救われたと言っていただくのは、これほど嬉しい言葉はありませんよ。今日はありがとうございました。ご活躍を期待しています。

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